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日本の美を集結させたミュージアムホテル、ホテル雅叙園東京。昨年、創業90周年を迎えた歴史ある空間には、東京都指定有形文化財『百段階段』をはじめとしたアートが至る所に存在しています。また桜咲くこの季節は”桜“を主役に据えた、おいしく嬉しいキャンペーンも開催中。そこでご活躍のイラストレーター・アーティスト、戸屋ちかこさんに、アートをより身近に感じることのできるホテルステイを体験していただきました。
icon-tag 戸屋ちかこさん イラストレーター・アーティスト
京都出身、幼少期を福井県とバンコクで過ごし現在は東京在住。TIS(一般社団法人東京イラストレーターズ・ソサエティ)会員。TIS公募、ザ・チョイス、ペーターズギャラリーコンペ、UNKNOUN ASIA等、受賞多数。エディトリアルや広告のイラストレーションを軸に個展開催、フェアに参加する等、国内外にて活動。2019年赤坂サカスのカフェスペース『ホワイトサカス』の壁面を担当。第1回ショートショート大賞受賞・堀真潮著『夢と気づくには遅すぎた。』(キノブックス刊)の装画を手掛けた。本年5 月には六本木ヒルズアート& デザインストアにての個展が決まっている icon-home HP icon-instagram chicaco_toya
昭和初期に咲いた天才アーティストたちとの出逢いの場

昨年開催されたアートイルミネーション『和のあかり×百段階段2018 ~日本の色彩、日本のかたち~』では青森のねぶたとコラボレーションした展示が公開された
ホテル雅叙園東京の前身は「昭和の竜宮城」と謳われた『目黒雅叙園』。昭和初期、創業者である細川力蔵氏が芝浦の自宅を改築して開業した純日本式料亭『芝浦雅叙園』がすべての始まりです。その高級料亭でこだわったのは料理ばかりではなく芸術。日本画の大家である鏑木清方、荒木十畝、尾竹竹坡らに壁画や天井画、彫刻といった創作を依頼し美術品で埋め尽くした美の殿堂を作り上げました。1931年に現在の場所に移築され、日本最初の総合結婚式場としても広く知られる『目黒雅叙園』として新たな歴史を刻み始めます。そして2017年からはホテルとしての機能を強化した『ホテル雅叙園東京』にリブランドオープン。この4月1日で2周年を迎えます。

すべて一枚板を使って彫刻された彩色木彫板はすべて違う画柄となっている
ロビーに入って早々、彩色木彫板による『花魁回廊』を歩きながら目を見張った戸屋さん。天井には美人画、壁には日本橋や京都の川床などの風景を彫刻し、岩絵具で彩色した絵巻物のような風景が続き、元禄繚乱の江戸時代にタイムトラベルしている気分に誘います。至るところに枠に収まらないアートを凝らしているのが大きな特徴。そして、こうしたパブリックスペースの芸術作品はどなたでも見ることができます。
「以前からその噂を聞いてはいたものの伺うのは初めてです。HPで参照するのと実際見るのとは大違いで、ただただ驚きました。やはりアートはこの目で見なくてはいけませんね。花魁回廊の彩色木彫板の写実でない平面的な描写やデフォルメの仕方、色合いには現在のイラストレーションへの大きな影響が見受けられます」

立体的で生き生きとした描写。江戸時代の文化や装い、日本の美しい四季も描かれ見飽きることがない『花魁回廊』
通りが途切れ、ホテル棟への入口となる『招きの大門』まで来ると作品も空気も一変。足元には水面、幸福と繁栄をもたらす結び目の形をした棟飾りや龍、鳳凰の装飾に囲まれると、まるで異次元に触れたかのような不思議な感覚を受けたそうです。
「ここは美術館などと違ってアートが自然に散りばめられているので、リラックスした気分で心地よく鑑賞できますね。生活の中にアートがある豊かさと大切さを改めて感じてとても感動しています」

極彩色の木彫板の世界観から夜空をイメージする空間へ。招きの大門をくぐると光降り注ぐ華やかなバンケットレストラン・エリアに繋がり、光とアートによる演出が凝らされているのが感じられる
細川氏は才能溢れる芸術家を後押しし日本美術の発展に一役買った人物としても知られています。見込んだ画家にひとつの空間を与えて好きなようにプロデュースさせるばかりか、彼らの才能がより開花できるように画材も望むままに与え、優れた職人を集め、心ゆくまで作品創りに没頭させたと聞き、戸屋さんはさらに驚きを隠せません。
「細川さんが心血を注いだ雅叙園で画家たちが切磋琢磨し創り上げた美を再現することはもう難しいかもしれません。ですが今を生きる作家として昭和初期に存在した芸術への寛容さと挑戦の偉大さが、ここから連鎖することを願わずにはいられません」
そして宿泊者限定で開催される貴重なアートスポットを巡れる『雅叙園アートツアー』や『モーニング・アートヨガ』といったアクティビティを体験できる宿泊がますます楽しみになったようです。
細川力蔵が描いた アートによるおもてなしの神髄

フロントのある8階や客室を繋ぐ2機のエレベーターにはそれぞれ違う趣きの孔雀が螺鈿で細工されており、戸屋さんは思わず声をあげるほど、アート尽くしに驚いた
そもそも細川氏が天才絵師らを集め美術を凝らした理由は一個人の贅沢の為ではありませんでした。食事や宴会の合間も常にゲストを飽きさせない、いわばアートのおもてなしだったのです。そのホスピタリティをいっそう強く引き継いだのが、ホテルエリアです。全室80m²以上のスイートルームに加えて総大理石のスチームサウナとジェットバスを完備した客室数全60室と限られたゲストに最上級の時間を提供しています。世界80カ国以上、520を超える小規模独立系かつ高級で個性的なホテルのみ加盟することのできる『スモール・ラグジュアリー・ホテルズ・オブ・ザ・ワールド™(SLH)』にも名を連ねています。

フロントに併設されたエグゼクティブラウンジ『桜花』では朝食、アフタヌーンティー、バータイムのサービスを受けることができる
「お部屋までの道のりの控えめな装飾や、やさしい香りに迎えられるとパブリックスペースの興奮から冷め気持ちがスムーズに切り替わりました。窓が大きく部屋から見える景色が絵画のようですね。エグゼクティブラウンジ『桜花』では九谷焼、美濃焼、信楽焼の中から好きなカップが選べ、説明書きも添えてありました。そうした細やかな心遣いも嬉しかったです」
階下の豪華絢爛さ、まるでアートの洪水のような賑やかさからは打って変わり、客室を茶室、廊下とエレベータホールを茶庭と見立てたデザインのコンセプトは「和敬清心」。「和」は和合・互いに楽しもうという心、「敬」は他を敬愛する心、「清」は清潔、清廉、「心」はホテル雅叙園東京のホスピタリティの誓いを表す言葉。アグレッシブな芸術の世界観と茶道の世界観を融合させ独自の空間とおもてなしを提供しています。