コロナ禍であっても旅への情熱は止められないもの。
そして今だからこそ、実感したい日本のホテル・ステイがあります。
そこで、旅を愛するおひとり、青栁貴史さんと共に
かけがえのない記憶を紡ぎに出かけてみると致しましょう。
新連載『旅する製硯師』、スタートです。
青栁貴史(あおやぎ・たかし) 青柳派四代目製硯師/硯作家 1979年、東京都浅草生まれ。浅草で80年続く和漢文房四宝「寶研堂」四代目。 作硯、文化財修復、復刻製作を専門とする。16歳より祖父青柳保男、父青柳彰男に作硯を師事。 20代より中国大陸の作硯家との交流を経て、伝統的硯式の研究、再現製作に従事。 また各地にて硯材の採石、石質調査を行っている。硯文化の熟成を目指し、 個展にて作品発表をしている。社会活動として学校等での講演を通じ、 日常生活における毛筆文化の普及に注力。 在宅美術館:https://home-museum.net/ Instagram:https://www.instagram.com/seikenshi_official/ |
製硯師、「書斎」を求めて旅にでる
青栁貴史さん(42歳)は、採⽯から作硯まですべてを⼀⼈で⼿掛け、⽇本で唯⼀「製硯師」と名乗る硯作家です。⽇本や中国⼤陸の価値ある⽯を素に、硯の発祥となる中国の伝統的な製法のものから⽇本古来の硯を製作。石を求めて中国は勿論、日本各地の硯の石に適した採掘場を旅するのが日常です。とはいっても、我々が物見遊山で出かける旅行とは大違い。たったひとりで秘境に分け入り、時に危険も厭わず採石に没頭し、名硯となるべき石を地球から授かるのが仕事なのです。
とはいえ、あいにくのコロナ禍。海外はもちろん、日本各地の往来もままならない時代を迎え、青栁さんご自身の旅も公私含め変化しています。だからそこ「今」だから出来る、Voyager風大人旅にお誘いすることになりました。
「あえて今、泊まりたいのは、これまで宿泊したことのなかったタイプのホテル。コロナによって、みなさんも以前のような観光を軸とした旅行からホテル・ステイを楽しむスタイルへと変わっていると耳にします。ならば、ぼくのライフワークにリンクした宿を選びたいものです。そこでこだわったのは「書斎」を感じさせる宿泊施設。かつて”書斎の王様”に位置づけられた硯を作るのがぼくの仕事です。だからこそ、寛げ、つい「毛筆で一筆書きたくなる」、まるで自分の書斎のような居心地の良いホテルと出逢いたいですね」
そこでひとつめの「書斎」に選んだのが『藤乃煌 富士御殿場』です。開業は2018年4月。富士山の裾野まで見渡せる絶景を間近にグランピングができるとあって、昨年からより一層注目を集めています。
グランピング(Glamping)とは、魅⼒的なという意味の「グラマラス(Glamorous)」と「キャンピング(Camping)」を合わせた造語。テント造設やBBQのための⾷材や⽤具といった準備は一切不要。手ぶらで上質なキャンプが楽しめるのが特徴です。またゲストルームは独立型・全19棟のオリジナルキャビン。ベッドルーム、ジェットバスとシャワールーム、トイレが完備され、さならがホテルのような佇まい。さらにルーム・イン・ダイニング方式でBBQ他の食事ができて至れり尽くせり。三密回避の旅にも最適です。
それもそのはず、母体は日本のホテル&レジャーの草分け藤田観光。『ホテル椿山荘東京』や『箱根小涌園 天悠』他、数々の自社運営ホテルで培ったノウハウを活か
し”ホテル屋”ならではの気配りでゲストを迎えます。
この藤乃煌流グランピングには、登山やソロキャンプに慣れ親しんでいる青栁さんもびっくり。
「まず、ここまで整った施設を自然の中に作るということ自体に驚かされました。とてもクオリティの高いキャビンであるだけでなく、贅沢なスイートタイプから車椅子 での利用も可能な上、犬連れも歓迎のドッグラン付きと多様性が高いのも魅力。とはいえ、この場所に、普通にホテルを作った方が多くを集客できるでしょうし、オペレーションもスムーズのように思えますが、敢えて自然と一体化したグランピングにしたことで、より価値を高めていますね」
「なにより、ホテルのように壁と壁で仕切られた空間と違って距離間があり、他の宿泊者の話し声も気にならず静寂性があります。最大の魅力はやっぱり富士山。リビングの真ん中に見えて、僕が知る限り一番贅沢な”書斎”だと思います」
そして、青栁さんの旅に欠かせないのは「手紙」と話します。「しばしば旅先で知人宛に手紙を書き、送り合っています。現地で見たもの、味わったもの、出会ったこと・ひと感動体験や気付きなどが主ですね。とくに現地で購入した写真入りのハガキや絵葉書などが届くと、心がほっこりするものです。手紙はSNSのように瞬時に写真や動画は共有できません。しかし、時間を経て届いた文字がさまざまな想像を与えてくれ、まるで旅先からのギフトのようです。
そして、書くのも楽しいもの。日常から離れ、旅先で見つけた居心地の良い”その日の書斎”に向かってみると、1日を落ち着いて振り返ることができ、旅時間をより満喫できます。とくに現地の水で墨を磨り、旅の出来事を振り返る時は、とても穏やかで、整ってゆく心地です」
グランピングのような自然に親しむ旅で書く手紙は、きっと心を解し、お送りする方 にも安らぎを届けてくれそうですね。普段、手紙を書かれない方でも、大切な方に旅のワンシーンを切り取ってお伝えする、そんな気軽さで手紙に向かってみてはいかがでしょうか。
記憶も味の一部 ホテルならではの充実ディナー
さて、『藤乃煌』に宿泊するならばやはりお食事付きのプランがおススメ。ディナーは冬季と夏季でメニューも変わるため、それだけでリピーターを獲得しているほど美味なのです。
【この日のディナー・メニュー】 ◆オードブルサラダ ・アミューズ3種盛り 合鴨スモーク/フジヤマレインボー桜咲き鱒のマリネ/チーズ ・オリジナルサラダボトル ◆温菜 ・静岡県富士宮産マッシュルームと御殿場高原ベーコン ・丹那牛乳シチューグラタン ◆パン ・バケット ◆スープ ・渡り蟹と鶏団子旨味スープ ◆メインディッシュ ・トマホークステーキ(AUS産ブラックアンガス牛 純血100% 骨付きリブロース)/ 鮪/野菜4種/ソース2種 ◆焚火のデザート ・スモア(マシュマロ/チョコレート/クッキー) ※メニューは一例です。詳細は直接施設に問い合わせください |
キャビン内には、ミニキッチンを常設。ダイニングテーブルや焚火をするためのファイヤープレイス(薪、トング、グローブ付き)、さらにガスバーベキューグリル他が用意されています。そのため運ばれた料理に火を通して頂くだけ。
青栁さん、慣れた手つきで火をおこし、その形に由来したトマホーク(斧)ステーキを焼く青栁さん。日頃、ひとりで山に登り、鍋ひとつで出来る料理を作るそうですが、ディナーの用意も手際よく進めていきます。
「こうして自分たちで調理をし仕上げることで、“おいしいお肉を食べた”という感想ではなく、“焼いた”という記憶になるのが、グランピングの付加価値ですね。そして、ホテルならではの料理も華やかで、なお更良い思い出になります」
前菜に始まり、焚火を使って自分で作るデザート・スモアまでたどり着く頃には、キャビンを星空が包んでいました。自然に寄り添いつつ快適なグランピング。現代ならではのステイ・スタイルであり新たな旅の楽しみ方の提案です。
早くも絶景「書斎」にたどり着いた青栁さん。『旅する製硯師Ⅰ- 後編 藤乃煌 富士 御殿場』は4月15日更新。こちらも人気の朝ごはんや、近隣の自然を満喫するアクティビティなどをご紹介します。
藤乃煌 富士御殿場
住所:静岡県御殿場市東⽥中3373-25
予約・問い合わせ:050-3504-9933(9:00〜19:00)
藤乃煌(現地):0550-75-9111(10:00〜18:00)
公式URL:https://www.fu-ji-no.jp/kirameki/
アクセス:東名高速道路御殿場IC第一出入口から3分。JR御殿場駅からタクシーで約10分
協力:モンベル
Voyagerは旅を愛し、旅で生かされる” 大人” のためのWeb マガジンです。旅に欠かせないもの、それは感動とストーリー、かけがえのない想い出。そのために実際に取材を経て、生の声を伺い記事を制作しております。だからこそ、このサイト全般において文章・画像等の無断転載、無断転記は固くお断りしております。文章、写真の著作権はすべてVoyager編集部に帰属します。
コメント