駆け抜ける世代はもう過ぎ去りました。休むこと、時に立ち止まること、なにより旅をすることは今だからこそ必要なのです。目指すは近くて実は未知なる土地、アジア。Asian Journey、特別だけど手に入りやすい旅、なにより「楽しかった」「行ってよかった」と思える土地、ホテル、時に人をご紹介します。第3弾は新時代のラグジュアリー・リゾート 大人が恋するワンダーランド マカオをお送りします。なお、本編は2019年度上半期取材の最新情報です
芸術の花咲く、マカオ
マカオ航空による直行便に加え、昨年、マカオ(澳門)、珠海、香港の3都市を結ぶ港珠澳大橋が開通し、ますますアクセスが便利になったマカオ。中でも花を添えたのは本年6月から10月に開催されたアートと文化の祭典『アート・マカオ(藝文薈澳)』です。
メイン会場となったのは1999年に設立されマカオ芸術博物館。プレ・イベントでは『中国美術館 新時代の美~中国美術館所蔵 巨匠作品展』(2019年7月28日終了)を開催。続いて『特別展 シルクロードの追憶~西夏王朝の遺物展』(2019年10月6日終了)で好評を得ました。加えてIR(統合型リゾート)、各国の領事館やホテル、レストランと街中でアート作品を鑑賞できる大規模なイベントを催しています。
そもそも歴史的、文化的なアートを所持するマカオのホテルは、ここぞとばかりに熱のこもった展示物を公開。世界中の注目を集めています。ここではその一部をご紹介します。
アートの殿堂の本領発揮 MGMコタイ
すでにご紹介させて頂いた2018年に開業した『MGMコタイ』。西洋のアートを中心に集めた『MGMマカオ』に対して東洋に美を集結した、まるでミュージアムのようなラグジュアリー・ホテルです。
ここではMGMシアター、ザ・スペクタクルという900㎡の巨大な4K・LED スクリーンを完備したアトリウム空間を活かした現代アート『Hua Yuan』を展示。中国の伝統的な顔料の歴史と芸術性を物語る作品が主役。アートデジタルビジュアルアーティスト、ヤン・ヨンリャンと北京オリンピック(2008年)で特殊効果・ビジュアルのチーフデザイナーを務めたことで知られるジェニファー・ウェン・マによるデジタルスクリーンを存分に生かした水墨画のアートが圧巻です。
もちろん各スポットに展示された300点以上の作品も見ごたえがあります。中国・現代美術シーンに西洋のコラージュを取り入れた最初のアーティストとして称賛されるXue Song氏によるコラージュ『Eight Views of Macau(マカオ八景)』もそのひとつ。ご当地MGMと共に、『聖ポール天主堂跡』や『マカオタワー』といった新旧のランドマークを色鮮やかに表現しています。
モザイク的な美しさに加え、独自の表現を目の当たりにすることができるのも特徴です。1990年代にXue Song氏のスタジオで起きた火災により、以降彼は焼け残った書物の残骸を取り入れることに触発され「燃える」と「衝突する」が独特の芸術的言語になっていて『Eight Views of Macau』にも用いられています。
MGMコタイ 【MGM COTAI】
住所:Avenida da Nave Desportiva, Cotai, Macau
電話番号:+853 8806 8888
公式URL:https://www.mgm.mo/en/cotai/
『MGMコタイ』のアート情報は当サイトの記事を合わせてご参照ください。
美の城壁 ウィン・パレス
『MGMコタイ』のすぐ向かいに位置するのは2016年に開業した『ウィン・パレス』。ホテル正面には水と光のエンターテインメント『パフォーマンス・レイク』。噴水ショーの行われるのを間近で見ることができる乗り物、ドラゴンスカイキャブが設えられ、非現実なホテル体験へと誘います。
2019年6月6日から10月6日に開催されたのは現代技術と芸術の融合による『WYNN-GARDEN OF EARTHLY DELIGHTS(永利藝賞 人間楽園)』。たとえばメディア・アーティストのRefik Anadol氏の作品『Macau Currents: Data Paintings』は、マカオの海面で30分間隔で記録された高周波レーダーデータに触発されたデータ・スカルプチャーです。 LEDメディアの壁で表現され、波間や海底を漂うような神秘的で美しいブルーを体感できます。また同氏による『Melting Memories』は、データペインティング、LEDによるライト・プロジェクションズ、データ・スカルプチャーを組み合わせ脳が記憶を思い出す方法を視覚的に表現しています。他、才能溢れるアーティストによる大きさも表現も合わせてスケールの大きな作品展示が話題を呼びました。
普段から溢れるような生花やブリザーブドフラワーで彩られたホテル内では所有の芸術品が至るところに展示されており、『アート・マカオ』終了後もゲストの目を楽しませてくれます。高級ブランド志向やニセ物文化を風刺した中国人アーティスト、Liao Yibai氏による『シンデレラ・ハイヒール』といった近代アートから18世紀の清王朝時代に作られた『バクルー公爵の花器』と年代もジャンルも幅広く展示。バクルー公爵の第三夫人のエリザベス・モンタギューが保有した陶器コレクションの一部であるこの『バクルー公爵の花器』は『ウィン・パレス』の美術品の中で最も高額で時価120億円と言われています。
黄金の龍の装飾が施された陶器には道教と仏教の吉祥文様が施され4点セットになっており、世界に現存する同一セットはイギリスのエリザベス二世女王が所有し、バッキンガム宮殿に所蔵されているといいます。そうした貴重な名品が驚くことに『ウィン・パレス』の西の名店街に一般展示され、誰でも間近で鑑賞することができるのがマカオのIRならではの気前の良さと大らかさです。
ウィン・パレス【Wynn Palace】
住所:Av. da Nave Desportiva, Cotai
電話番号:+853 8889 8889
公式URL:https://www.wynnpalace.com/jp(日本語対応)
アートが描く未来 モーフィアス
2018年6月の開業以来、注目を集めるラグジュアリーホテルといえば『モーフィアス(Morpheus)』。メルコリゾーツによる『シティ・オブ・ドリームス マカオ』の最新高級ホテルブランドで、設計は故ザハ・ハディド氏。外周の鉄骨が建物を支え内部に柱を使わない世界初の自由造形による外骨格型高層建築。ひと目みたら忘れられない造形美を誇り、存在そのものがアートのようです。開業からわずか2ヵ月で『World’s Greatest Places 2018(世界で最も素晴らしい場所2018年度版)』を受賞。さらに本年はマカオで初めて商業建築に授与されるベルサイユ賞も受賞しました。
その『モーフィアス』で展示されているのはKAWSによる『GOOD INTENTIONS』(2019年6月6日〜2019年10月31日)。通常は宿泊者とレストラン『Yí (天頤)』のゲストしか出入りできない23階に展示。
『GOOD INTENTIONS』は605 x 305 x 248 cmと大きな作品。ミッキーマウスの造作とキャラクター性(道化師と頭蓋骨)を融合させたフィギュアで人間の関係性を表現。特に親と子の関係を反映しています。
モーフィアス【Morpheus at City of Dreams】
住所:Estr. do Istmo,Cotai, City of Dreams,Macau
電話番号:+853 8868 8888
公式URL:https://www.cityofdreamsmacau.com/en/stay/morpheus
日本のアニメ、浮世絵の融合アート スタジオ・シティ・マカオ
8の字型の観覧車『ゴールデンリール』で知られる『スタジオ・シティ・マカオ』では『JOURNEY FROM UKIYO-E TO ANIME』(~2019年11月中旬まで)を開催。私たちの馴染みの深い漫画やアニメ、浮世絵にインスパイヤされた世界的なアーティストの作品を展示しています。
館内にはインベーダーゲームなどのアーケード・ゲームの懐かしいゲーム機のレプリカも置かれ、無料でプレイすることができます。また、各作品もユニークで自由。人気の中国人アーティスト、Han Yajuan氏によって2009年に製作された『Blingee』は油絵にスワロフスキーを組み合わせたポップアート。
また浮世絵へのリスペクトを込めた『Amanami Animated』はMAP OFFICEによるもの。江戸時代の沿岸の風景上に伊勢の海女の歴史や文化を浮世絵風に表現したアニメーション・ドローイングです。
8つのシーンは8つのパネルに水(青)、土地(緑)、家(黄色)の3つの色彩を主に表現されています。 これらは実際にアーティストが日本を度々旅行し収集した文化や神話をもとに想像したもので外国人ならではの視点が新鮮です。
スタジオ・シティ・マカオ【Studio City Macau】
住所:Studio City Macau, Estrada do Istmo, Cotai,Macau
電話番号:+853 8865 8888
公式URL:https://www.studiocity-macau.com/en
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写真・文:泉美咲月(Satsuki Izumi)
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