初回の緊急事態宣言から早1年が過ぎました。
あれから旅のあり方も変わり、「三密」を避けた移動、滞在が中心になりつつあります。
そのため、注目をさらに集めることになった旅のスタイルのひとつがグランピング。
そこで、前回スタートした連載『旅する製硯師』の主人公、青栁貴史さんに初めてご体験頂きました。
キャンプとは、ひと味もふた味も違った「グラマラスなキャンプ」を提供する『藤乃煌』後編をお届けします。
製硯師、富士の裾野で自然に親しむ
富士山の絶景を独占できるとあって人気の『藤乃煌 富士御殿場』。ホテルの個室さながらの独立式キャビンの設えは、四季を問わず充実した宿泊&休日を提供してくれます。青栁貴史さんは、製硯師という職業柄、登山、キャンプと経験豊かではありますが、手ぶらで行けるグランピングは初体験。焚火の炎揺れるディナータイム、快適な空間での睡眠と充実した1日目を終えました。
さて、お食事の楽しみは翌日も続きます。朝食は、キャンプの醍醐味をさらに体感させてくれるホットサンド。澄んだ空気の中、敷地内のビバレッジステーションにバスケットを受け取りに行くところから、この日のアクティビティがスタートです。
ヨーグルト、サイドディッシュやフルーツ付き。メインのホットサンドは、ご自分で焼き上げて頂きます。バーナーや直火用のホットサンドメーカーを使用しますが、勿論、初心者でも大丈夫。作り方のマニュアルも付属されていますし、少し焦げてもご愛敬。それもまた想い出になります。
さて、この『藤乃煌』では、宿泊ゲストのみが申込み可能なアクティビティ(有料)を各種用意していて、遊びも観光も”手ぶら”で体験することができます。
アクティビティ メニュー一例
【フジヤマ・アクティビティ】
・ローカル・エコツアー(2名から/通年実施/所要時間 3時間/料金 5,500円~)
藤乃煌発着で自然豊かな御殿場高原を巡るエコツアー
・プライベートヨガ(1名/通年実施/所要時間 70分/料金 1〜4名 一回8,800円・5〜10名 一回13,200円)
藤乃煌内で自然を感じつつ、講師からプライベートレッスンを受けられます
【ゴーアウト・アクティビティ】
・体験乗馬(1名/通年実施/所要時間 30分/料金 5,500円~)
御殿場カルチャーファームにての乗馬体験
【インキャビン・アクティビティ】
・蜜蝋キャンドル作り(小学生以上可/通年実施/所要時間 30分/料金 990円)
ハチミツの巣を原料とした粘土のようなミツロウでロウソク作り。作成したキャンドルは夕食時やお家でも楽しめます
※詳細については施設にお問い合わせください
予約・問い合わせ電話番号:050-3504-9933(9:00〜19:00)
青栁さんが参加したのは、御殿場の自然と風土を感じられる『ローカル・エコツアー』(2日前までに要予約)。近隣の平和公園や秩父宮記念公園、二岡神社他を70分程、9時もしくは13時から散策します。事前予約しておけば、シューズやザックの貸出し(数量限定)も利用できます。朝食後やチェックアウト後にも参加できるのも嬉しいポイントです。
「自然の中、御殿場の名所をめぐるツアーは、とくに旅の直前までお忙しい方にとって最適なプログラムではないでしょうか。しかも、地元情報にお詳しいインストラクターのガイド付きです。ホテルのこうしたアクティビティを体験するのも初めてでしたが、身体も頭もお預けする、ホテルサービスの長所も感じることができました。
中でもおススメは二岡神社。自然が色濃く残ったご聖域で、映画やドラマのロケ地としても度々登場しています。古くは、黒澤明監督『七人の侍』、北野武監督の『座頭市』、またドラマ『JIN-仁-』などで多々使用されていることから、すでにここの景色を記憶の片隅に刻まれている方もいるかもしれませんね。『藤乃煌』からも徒歩圏内とお近くなものの、鳥居をくぐって早々に雰囲気が変わるのが印象的です。より深い自然に圧倒され、澄んだ空気に心が洗われるようでした」
この二岡神社、第十二代景行天皇の御代、日本武尊が東征の際に創建したと伝えられ、北駿地方(裾野市、御殿場市、小山町エリア)では最も歴史ある神社のひとつです。御祭神は木花之開耶姫命。境内を取り囲むのは樹齢数百年の3メートル以上も幹周りのある杉林。その年月を物語るように木々や石段が苔生していて鬱蒼とした木々の合間を縫って陽が射すと、とても神秘的な雰囲気を放ちます。
野筆セットでしたためる、旅の想い出
一方、青栁さんならではの旅の楽しみ方も教えて頂きました。
「旅先で手紙を書いて知人に出すばかりでなく、俳句を書くのも、ぼくの日常の楽しみのひとつです。川や湧水を汲み、それで墨を磨る。その時、その瞬間をしたためる、皆様にもぜひ実践して頂きたい毛筆と旅のアクティビティです。目の前の景色や水を文字にしてお送りする、または自分へのお土産にする。写真とはまた違って、いっそう色濃く記憶に残るものです」
この日、訪れたのは『藤乃煌』から車で10分程度の『二子・沼田の湧水』。富士山を眺めることのできる場所にあり、不動池と二子水神が2つ並んだ清らかな湧水です。中央に石の不動明王が祀られる不動池には水汲み場があり、終日、水汲みの人が訪れる名水。周囲で栽培される御殿場コシヒカリや野菜にも古くから活用されてきました。
早速、青栁さん監修の野筆セットを取り出し、不動池の水で墨をする青栁さん。
「富士山の湧水は、年間通して水温14度~15度といいますが、これくらい冷えていると普通、磨り心地が固くなるものです。しかし、水滴から垂らした汲みたての水だというのに、やわらかに墨や硯を包んでくれました。この水で炊いたお米が、とてもおいしいと評判ですが、墨を磨るのにも最適です。ぜひお試し頂きたいですね」
こうして『藤乃煌』や周辺を書斎化して堪能した青栁さん。グランピング体験はいかがでしたでしょうか?
「ご多忙で、仕事を詰め込みがちな大人こそ、ここに”なにもしないことをしにくる“のをおススメしたいと思います。グランピングは事前の準備やテント設営のような手間もありません。だからこそ、なにも考えずに”その場”を味わうことができます。
そしてなにより、こんな”別荘”があったら最高ですね。火を起こし、星を眺めてゆったりとした時間を過ごす。読書や映画を観るものいいですね。心の赴くままに、普段できないことに没頭する。そうした日常と切り離した時間を過ごすための別荘として、またお邪魔したいです」
次回の『旅する製硯師』をお楽しみに。
※当初、5月1日掲載を予定しておりましたが3度目の緊急事態宣言を鑑み、掲載日を変更させて頂きました
青栁貴史(あおやぎ・たかし)
青柳派四代目製硯師/硯作家
1979年、東京都浅草生まれ。浅草で80年続く和漢文房四宝「寶研堂」四代目。作硯、文化財修復、復刻製作を専門とする。16歳より祖父青柳保男、父青柳彰男に作硯を師事。20代より中国大陸の作硯家との交流を経て、伝統的硯式の研究、再現製作に従事。また各地にて硯材の採石、石質調査を行っている。硯文化の熟成を目指し、個展にて作品発表をしている。社会活動として学校等での講演を通じ、日常生活における毛筆文化の普及に注力。
在宅美術館:https://home-museum.net/
Instagram:https://www.instagram.com/seikenshi_official/
藤乃煌 富士御殿場
住所:静岡県御殿場市東⽥中3373-25
予約・問い合わせ:050-3504-9933(9:00〜19:00)
藤乃煌(現地):0550-75-9111(10:00〜18:00)
公式URL:https://www.fu-ji-no.jp/kirameki/
アクセス:東名高速道路御殿場IC第一出入口から約3分。JR御殿場駅からタクシーで約10分
協力:モンベル
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