「日光人形焼 みしまや」 ~いつわりなき名物 日本のお土産関東編1~

いつわりなき名物 日本のお土産

いつの頃からお土産への期待が薄れはじめていませんか?
観光地の名物に偽りあり、名物にうまいものなし。
流行廃りに振り回され、一方で「老舗」のすべてが名ブランドとも限りません。
とはいえ全国津々浦々にまだまだ、うまくて優れた”名物”が隠れています。
旅の楽しみ=名物との出逢いだからこそ、「いつわりなき名物」と「作る人」に迫ります。


Shop list1 日光 人形焼「みしまや」

三島屋の向かって左側に暖簾をおろす人形焼きの『みしまや』

光街道(119号線)は、日光杉並木から東照宮、二荒山神社、輪王寺という二社一寺を結ぶ道の通称です。今もかつての宿場町の風情を所々に残す界隈に軒を連ねるのは日光彫を商う三島屋日光彫とは、この地方名産の彫刻のことで栃木県産のトチノキなどの木材にヒッカキ刀という独自の刃物で彫を入れ、日光朱堆塗りと呼ばれる朱漆と磨きで仕上げた技法を伝承しています。

日光彫『三島屋』にディスプレイされた日光彫による椿を施した皿。芸術作品から日用品まで幅広く創作されている

祥は遡ること四百数十年。江戸時代初期、1616年に没した徳川家康はその遺命により翌年には日光に祀られることになり、東照宮造営が開始。その際、宮大工をはじめとした大勢の職人たちが全国から集められました。完成後、この地に留まった彫師、漆師らが引き出しや箪笥、盆や皿などの家具や食器を作り、土産物として商いをしたのが始まりといわれています。

伝統と名所、日光から生まれた新たな銘菓

の伝統は長らく引き継がれ、平成の世に新たな進化を起こしました。それが三島屋の四代目、中山圭一さんによる人形焼。東照宮の陽明門、薬師堂の鳴きから生じた昇り龍降り龍、眠り猫三猿といったこの地所縁のモチーフを人形焼に仕立て、屋号にみしまやを掲げ販売を始めたのが2012年のことでした。

人気の三猿の人形焼き。叡智の3つの秘訣「見ざる 言わざる 聞かざる」を表している

は中山さん、学生時代は多摩美術大学で彫刻を学んだ腕と経歴の持ち主。当時、東京から故郷に帰省する乗り継ぎの浅草駅で人形焼きを見かける度に「日光らしい人形焼きが作れないものか?」と考えるようになりました。やがて三島屋が区画整理で建替えの転機を迎えることに。そこで月日を経て実現したのが家業と併設した人形焼店です。

中山圭一さん。大学、大学院と彫刻を学び、日光彫の作り手としても技を磨いた

作、造形はお手の物。早速、焼き型のための原型造りを始めます。生地や餡の材料は国産の食材と決め、北海道産の小麦粉や小豆、卵は栃木県の磨宝卵、甘みは尾瀬のハチミツに広島産のもち米飴などを選びました。しかし肝心な人形焼作りは初心者。そう簡単にいきません。試行錯誤の末、開店は予定より半年遅れに。しかし持ち前の粘り強さと探求心、チャレンジ精神が途切れるはずはありませんでした。

店頭に飾られる人形焼きの原型

うして誕生したのが土地柄、伝統工芸のスピリッツを宿す、みしまやの人形焼。日光彫の図案のひとつ、椿のモチーフも加え、店頭に並んでいます。

Eat of sculpture 食べる芸術品への挑戦

り始めて早5年。日光彫に加え、人形焼の2つの草鞋を履く職人となりました。これはけっして二兎追うものではなく、中山さんへと受け継がれた日光彫のDNAと技術、加えてアーチスト精神が生み出した賜物です。その姿には力が宿り、ひと目見れば唯一無二の菓子であることに気づくでしょう。

お土産、贈答にも最適な7種の詰め合わせ。予約販売のみの山椒入りもある

現に中山さんのもの作りの哲学はEat of sculpture、食べられる芸術。そして目指すは世界一、型の種類豊富な人形焼店。そうした意欲は今後、革新と伝統を秘めた新作を作り出すに違いありません。

東照宮の象徴のひとち、陽明門の人形焼。添加物に頼らず、卵によるふんわりとした風合い、国産の小麦粉を使用しもっちり感を醸し出している

も然ることながら人気の理由は当然味わい。焼き立ての香ばしさと卵の香り、さらりとした餡、強めに焼いた皮の適度な苦みも印象的。吟味した素材の持ち味も際立ち、他の人形焼と一線を画すのは翌日も続くおいしさ。生地と餡はさらに調和しまろやかな食べ頃を迎えます。

7種の詰め合わせ(税込1,300円)他、三猿(1個/税込130円)と椿(税込100円)は、ひとつから買え気軽に立ち寄れるのも嬉しいところ。評判を聞きつけた参拝客や近所の子供たちのオヤツにと絶えず客が暖簾をくぐり、求めていきます。

椿の人形焼きは1個から販売

ちなみに「見ざる 聞かざる 話ざる」の三猿のうち、男性は聞かざる、女性は言わざるを選ぶ傾向が高いのだとか。男女の性質を見てとれるセレクトですね。

つて神社や仏閣の門前は信仰心と共に栄え、賑わったものです。お参りの後に頂くおいしい門前菓子も数々生まれました。日光東照宮建造の折、この地に一流の職人が集まり鎬を削り、芸術と呼ぶにふさわしいお宮を作りだしたように土地と人、神仏との関わりが日本の文化の要であったといっていいでしょう。

時代の流れの中、ものの価値や観光のスタイルも変化を遂げています。同時にいずれの名所も栄耀栄華のままではいられません。ひとついえるのは名所も伝統も、頑固に留まり絶やすべきではない遺産であること。そのためには残し伝える努力と共に新しきを生み、育てる力と勇気が必要だということ。

からこそ、みしまやの存在は貴重であり、看板商品、日光人形焼はもっと多くの方の口へと運ばれるべきです。そうして食によって日光彫と出逢える人も増えていく、なにより観光客も語り部のひとりなのです。

この時代、お取り寄せも可能ですがまずは日光へ。自然の中、歴史を紐解きつつそぞろ歩けば、尚更おいしい人形焼に辿り着けます。

~日光人形焼 商品案内~
詰め合わせ 1箱1,300円(税込)

三猿 各130円(税込) 椿100円(税込)
商品の予約可。日光人形焼詰め合わせの山椒風味は1日前までの予約で限定発売
賞味期限:3日

日光人形焼 みしまや
栃木県日光市石屋町440

電話:0288-54-0488
営業:9:00~17:00
定休日:木曜日
メールでの問い合わせ:amai@nikko-n.com
URL http://www.nikko-n.com


いつわりなき名物 日本のお土産関東編(不定期更新)
写真・文:泉美咲月(Satsuki Izumi)

Voyager編集部

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