本を持って旅にでかけよう。心に沁みる言葉、物語、もしかしたら人生を変えるかもしれない一冊をご紹介。
心に沁みる 樹木希林が残した幾多のことば
死は平等に、誰にでも訪れる。裸で生まれてきたとき同様に魂はなにも持たず身軽に旅だっていく。同時に永遠に残していけるものが唯一あるとしたら、それは「ことば」なのだと本書を読み始めてすぐに”樹木希林“という人に教えられる思いがこみあげてくる。
その死から3か月後に発売された本書には名女優、樹木希林の著作ではあるが文藝春秋の担当者が1985年から2018年までのすべての雑誌記事を読破し、そこから厳選した154のことばで編まれている。タイトル『一切なりゆき~樹木希林のことば~』は、著者が生前、色紙に書いていた「私の役者魂はね 一切なりゆき」から選ばれたものだ。
また表紙の写真は『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』のポスター撮影時に宮城県細倉鉱山、炭鉱跡地で過ごすうちに浮かび上がった「顔施」であり、ご自身がとても気に入っていた表情だという。視点はレンズに向かっていないものの、まるで仏像のように、どこからでも見守ってくれているかのように見える。そして、スクリーンやテレビの向こう側にいたその人が、見知らぬ人々の心を温め続けている意味がこの本に凝縮され、11ページに渡る圧倒的な目次数からも溢れている。
娘の内田也哉子さんが葬儀の際、喪主代理の挨拶で語った「おごらず、他人(ひと)と比べず、面白がって、平気に生きればいい」に代表される欲や執着を持たない樹木希林としての生き方は容易いことではない。しかし綴られた軌跡と家族、45年に渡った夫・内田裕也との風変わりな婚姻生活、全身癌公表以降の生き抜き方といった数奇な人生と著者ならではの”ことば”は、まるで御守のような価値を放つ。
本書概要
『一切なりゆき~樹木希林のことば~』
【目次】
はじめに
【第1章】生きること/【第2章】家族のこと/【第3章】病いのこと、カラダのこと/【第4章】仕事のこと/【第5章】女のこと、男のこと/【第6章】出演作品のこと
喪主代理の挨拶 内田也哉子
樹木希林年譜
著者:樹木希林
出版社:文春新書
カバー写真:Ⓒ2007『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』製作委員会 撮影:藤井保
定価:800円+税
仕様:新書 216ページ/配本日:2018年12月20日/ISBN:978-4-16-661194-2
<著者プロフィール>
1943年東京都生まれ。女優活動当初の名義は悠木千帆、後に樹木希林と改名。文学座附属演劇研究所に入所後、テレビドラマ『七人の孫』で森繁久彌に才能を見出される。61歳で乳がんにかかり、70歳の時に全身がんであることを公表した。夫はロックミュージシャンの内田裕也、長女にエッセイストの内田也哉子、娘婿に俳優の本木雅弘がいる。2018年9月15日に逝去、享年75。
Ⓒ一切なりゆき~樹木希林のことば~ 樹木希林/文春新書
協力:文藝春秋
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